チキチキ!火種だらけの映画評

映画のネタバレ記事が多いと思います。私の映画の趣味をやさしい人は“濃い”といいます。

後悔しない人生の選択を。映画「JUNO/ジュノ 」で学ぶ「生き方講座」

「生き方講座」なんて仰々しいものではないです。すいません。ただの映画「JUNO/ジュノ」感想ですが、人生の選択、その大切さを扱った映画だったので、このようなタイトルにしました。

 

元々、面白いという噂は聞いていたけど(アカデミー脚本賞を獲っていたり)何故か「観るべき映画」の優先順位上位にならず、結局観てなかった作品。何故 急に観たかというと俺が人生ベスト級に好きな「サンキュー・スモーキング」と同じジェイソン・ライトマンが監督していると気付いたから。


インセプション」「スーパー!」とかに登場していたエレン・ペイジがJUNOの子と呼ばれているのは「女子高生が妊婦」というセンセーショナル な響きによる注目度の高さだろ?ハハン?と半笑いで侮っていたけど、俺が間違っていた。間違いなくこの作品はエレン・ペイジの代表作でした。すいませんで した。謹んでお詫び申し上げます。

 


JUNO Trailer
<あらすじ>
「妊娠したの」彼女はきりだす。「妊娠検査薬を3回試した。間違いない。」と続ける。そう語るジュノの口調は、まるで友人にテストで赤点を取った こと報告するかのようだ。中絶は嫌、でも自分では育てられない。考えた結果、里親を探すことにした。タウン誌のペット募集の次のページでジュノの御眼鏡に見合う里親を見つけた。その後、里親に会う約束を取り付けるのだが…

<信頼できる編集>
ジュノが里親の家に行くまでの描写が素晴らしい。高級住宅街とボロボロのワゴンを対比させることで、ジュノと里親のあいだにある社会的、金銭的格 差を描いている。その格差を埋めるドライな手段として法律が存在するが、そんなものに頼らなかったジュノの人柄と、常識に縛られる里親の抱える問題も暗示 している。この少しのモンタージュ描写でそれを演出するジェイソン・ライトマンは信頼できる男である。

<間違っていても、正しい>
■「サンキュー・スモーキング」という映画について
何で俺が「サンキュー・スモーキング」が大好きなのかというと、主人公が明らかに社会的に間違っていて嫌われる存在だから。

「未成年の喫煙?大歓迎だ!それでストレス発 散になって、未成年の犯罪抑止にも繋がっている。寄付もしているしね。」というような論理のすり替えを駆使し喫煙問題を煙に巻く。そんな彼の職業はタバコ 会社の広報担当者。

彼はこの仕事に誇りを持っている。「俺は嫌われものの味方でいたいんだ」息子に自分の生き様を語る。そんな彼を簡単に間違っているといっていい のだろうか。

社会で間違っているといわれることに従事している人は間違いなく存在する。そんな彼にも生活がある、家族がある、夢がある。彼らに優しい視点 を持つことを教えてくれたジェイソン・ライトマン監督には拍手を送りたい。


■中絶は、離婚は、10代の妊娠は、間違っているの?
この映画の偉いところはどの人の主張も否定していないし、肯定もしていないこと。例えば、中絶反対運動に熱を燃やす高校生も、宿題はやっていない、気分がのらないという理由 で。彼女をきちんとひとりの考えを持った女の子として描く誠実さがこの映画にはある。

ジュノを妊娠させた男の子も「ママが…」と親離れしていない様子を見せながらも、彼なりに考え悩み、変っている(そして、妊娠で変わっていく《主に体 型が》)ジュノと変わらず接している。
結婚したから、妊娠したから、相手に合わせて自分は好きなことを我慢しなければいけないのか。この問いにこの映画はきちんと答えている。

「そうし たい、と思えるならすればいいし、そうしたくないと思えれば、選択肢はいくらでもある」。

中絶でも、離婚でも自分がそうする選択をしたならそれでいい。 そうすることで自分が幸せになれるならば、強制はしない。と優しいのか、ドライなのか、よくわからない眼差しで登場人物を捉えている。

唯一つ言えるのは 「自分の選択には責任を持とうな」ってこと。この映画の登場人物は皆、逃げることはしなかった。

<自分の他人の選択を不愉快と思わないために私たちが必要な3つのこと>
■相手を知る
自分と相手は違う、まずそこに気付きましょう。相手がどのような人生を歩みたいか、自分の嗜好を受け入れてくれるか、そこにきちんと向き合いましょう。


■自分を知る
相手が自分の嗜好を受け入れてくれない場合、それを犠牲もしくは対策できるのかを考えましょう。なーなーにしてしまうと後で困ります。


■否定しない
離婚はダメ、相手の嗜好はダメ、受け入れない私はダメと初めから全てを否定してはいけません。自分には何ができて何ができないかを考えて、選択をしたならば、腹を括って行動しましょう。