【観てない人は】DVD化されていない名作「カルフォルニア・ドールズ」の素晴らしさを語ろう【人生損している】
「カルフォルニア・ドールズ」を観た。
営業社に乗って今日もどさ回り。これが取引先のスーパーを周る営業の話だったら、夢も希望もない。
カルフォルニアドールズ は、黒髪のアイリス(ヴィッキー・フレデリック)と、金髪のモリー(ローレン・ランドン)からなる美女レスターのタッグ。
彼女達二人は、マネージャー(兼 トレーナー)であるハリー(ピーター・フォーク)の運転するいつ止まるかわからなそうなボロボロのアメ車に乗って全米を巡業。
毎日が崖っぷちのどさ回り。
けれども彼女らには夢と希望がある。
ドールズの二人は有名になることを夢見、マネージャーのハリーはドールズなら必ずやれると信じている。その夢と希望をガソリンに、今日もボロ車を走らせている。
プロレスの試合シーンがめちゃくちゃ面白いのは勿論、巡業のシーン、映画でいうダレ場も面白い。
ハリーがドールズのファイトマネーを悪徳興行師か ら受け取りに行くだけでも一波乱がある。
スーパーの店長は、お金を払う時に渋ったりしない。
渋ったり、値切ったりされると会社同士の揉め事になるから、そ の辺のセーブが働く。しかし、ドールズみたいな(3人だけの)弱小な個人事業相手ならば、その辺のセーブをする必要はない。だから、悪徳興行師は好き放題 だ。
この悪徳興行師は終始悪役として描かれるのだけれども、何故か憎めない。
彼の横にいるアウトレイジビヨンドに出てきた名高達男(強面なのに間の抜 けた役柄)みたいなボディガードが「20ドル値切るのは流石に酷いんじゃないのかなぁ」と、悪徳興行師の良心を代弁するからである。
たぶん、悪 徳興行師はそんなことは一切思っていないし、その後も最低な行為を行なうのだけれども、名高達男が何か言うたびに嫌な感じはかき消されてしまう。
この辺の配置がにくい。
夢のために生きるというのは予想以上に辛い。
時には夢を信じられなくなり「この毎日に意味があるのか」と不安になる。気が狂いそうになる。時に は、心の底では夢が叶わなかった後どうするかを考え、そんなことを考えてしまう自分が嫌で、気持ちを紛らわすために薬や女に手を出し、挙句の果てには暴力 事件を起こしてしまうこともある。
でも、それを怒ったり、たしなめたり、笑い飛ばしてくれるユーモアに溢れた仲間がいる。
「やっちゃったものは仕様がないね。皆で解決しよう(こんな野暮なセリフはない)。」と、ガス欠になったボロ車を押しながら、夢を叶える道を模索し続ける。
そんなドールズたちの晴れ舞台をこの映画は最高に盛り上がる演出をする。
ラスト30分の試合のシーンは本当に最高だ。映画内のプロレスの試合の時 間の30分と、実際の現実の時間がリンクしているので、目の前で試合が行なわれておるのかと錯覚してしまう。
プロレスはいかに観客を味方につけるかが勝負 だ。
その演出をドールズのマネージャーのハリーは心得ている。
音楽家や応援団にお金を渡し、ドールズの登場シーンから盛り上げて観客の心を掴む。最終的に は音楽家も応援団もお金を貰ったからではなく、心の底からドールズを応援しているのが笑える。
ドールズたちは挑戦者である。そして負け組みである。
負け組みであるドールズが、必死に足掻く姿が観客の心を打つのである。
そして、この映画の素晴 らしいのは、負け組みが戦う相手が、決して勝ち組みでないことだ。
対戦相手のチャンピオンチームがダウンした時、戦う相手が露呈される。
カウントされな い。チャンピオンチームを負けさせないためにレフェリーが露骨な贔屓だ。レフェリーは、ドールズを勝ったら困る人間によって買収されていた。
チャンピョン贔屓だった観客も、遂にブーイング。映画を観ている我々の気持ちを代 弁をする。
「レフェリーごと倒しちまえ!」とマネージャーのハリーが叫び、ドールズがレフェリーをぶん殴る。
負け組みを勝つのを快く思っていなかった人間も、ドールズた ちの試合とハリーの演出に魅せられて、応援してくれる味方になっていく。最後はレフェリーも、その空気に流されて、3カウントをとってしまう。
夢を叶えるためにでも、生活のためにでも、何かを成し遂げるためにでも、生きるということは、気が狂いそうな現実に直面することだ。
時にはドロに 塗れながらも、いつ止まるかわからないボロ車の中で、笑い飛ばしながら前に進んだカルフォルニアドールズの姿は、気が狂いそうな現実しかない明日を生きる 希望を与えてくれる。
「カルフォルニア・ドールズ」は権利の問題で日本ではDVD化されていない。
しかし、多くの人がこんな30年前の映画を観るために、劇場に何度も足 を運んでいる。どんなに時代が進んでも、ドールズ達の生き様は決して色あせない。普遍的に愛される映画である「カルフォルニアドールズ」は素晴らしいと改めて思った。