チキチキ!火種だらけの映画評

映画のネタバレ記事が多いと思います。私の映画の趣味をやさしい人は“濃い”といいます。

「ロッキー」を観ると何故「エドリアーン!」と叫びたくなるのか!

 

「ロッキー」を観ました。

脚本を書いたシルベスタ・スタローンの魂の叫びがロッキーに乗り移り、ロッキー=シルベスタ・スタローンにしか見えないこの映画が面白くないわけがない!

 

シルベスタ・スタローンはこの映画からスター街道を登っていくと思うと感慨深いものがあります。

 

とりあえず、荻昌弘さんの名解説を載せておきますね。

 


荻昌弘・映画解説 「ロッキー」


素晴らしい解説。4分に足りない時間で「ロッキー」という映画の全てを語っている。いつかこういう解説したいなぁ。

 

荻さんも興奮してロッキーについて語っていますが、皆、ロッキー大好きじゃないですか。

 

何で皆こんなにロッキーが大好きなのか?

 

『アメリカで恵まれない生活を送っていた若者がたった一つのチャンスを掴んで、そこに自分の全ての努力と根性をかけて、栄光というものを手づかみにしていく』荻昌弘さんの解説の一説です。

 

ロッキーのそんな姿が、人生のドラフト待ちをしている俺達に重なるわけです。

『チャンスは巡ってくるはずだ』と希望を捨てずに生きる今日は決して無駄なものじゃないんだと。人からみたらクソみたいな俺も『チャンスさえあればやれるんだと、そう思ってもいいんだ』と教えてくれるんですね。

 

俺達は『今まで生きてきた俺という存在は決して間違っていないんだ』ということを証明する男、ロッキーを好きになるんです。

 

ボクサーとして上手くいかず、生活のため、借金取りの仕事を始め、ゴロツキの世界に片足を突っ込んだロッキー。同じイタリア系の伝説的ボクサー、『ロッキー・マルシアーノ』のポスターを眺める彼の心にある希望は、目の前の現実に飲み込まれそうになっていました。

 

そんなロッキーを支えたのが大して可愛くない(失礼!)エドリアンです。

エドリアンは30歳にもなるのに極端に内気で男とも話したことのないような負け犬女です。ロッキーは彼女と紆余曲折を経て付き合うことになります。

 

実は彼はここで「ささやかな幸せ」を手に入れているんです。チャンスを待つ毎日を過ごす彼が一緒にチャンスを待つ仲間、パートナーを観つけたことはロッキーの人生にとって非常に重要な意味を持っていると僕は思います。

 

そして、彼にチャンスが舞い降りました。

世界ヘビー級のチャンプ、アポロが初めての防衛線の相手に自分を指名したのです。

 

彼は巡ってきた「人生を無駄遣いで終わらせない」チャンスをものにするために必死に足掻きます。今までロッキーを町のゴロツキだと見向きもしなかった人間が、ロッキーを応援します。

 

ロッキーの名シーンの一つに「フィラデルフィア美術館の階段を駆け上がるシーン」がありますが、あのシーンが素晴らしいのはステディカム撮影が躍動感を生み出しているからだけありません。

観る人々、俺達の将来への希望がロッキーとともに駆け上がっていくからなんです。

 

試合の前日、ロッキーは現実を見ます。

『俺が世界チャンプに勝てるわけないじゃないか』とエドリアンにそっと弱音を漏らします。それと同時にロッキーは決断します。

「15ラウンド、どんなことがあっても俺は試合を辞めない。最終ラウンドまで戦えば、俺の人生が無駄なものじゃないと、証明されるんだ」と。

試合の後、ロッキーはエドリアンと『自分達の人生が無駄なものじゃなかった』ということ証明できたことの喜びを分かち合います。

ともにチャンスを待ってくれたエドリアンを叫び続けるロッキーの姿を観ながら、俺達は思うのです。

 「俺達の仲間がチャンスを掴んだ。次は俺がやる番だ」と。

 

そう思うと「エドリアーン!」と叫ばずにはいられないわけですね。ちゃんと題名の答えに繋げられましたね。よかった。よかった。